「オウ、じゃないよ。スイッチ、どこ? ラムネのスイッチ」
ラムネを押したら始まった、公園の回転。
もういちど押せば、きっと止まるはずだ。
でも、頭も、足も、もう、ふらふら。
ぐるぐるめまいで、ラムネスイッチがどこにあるのか、わからない。
「ハ。ハ。ハ」
「ねえ、スイッチ、どこ? ストップの、スイッチ!」
「ノンストップ!ノンストーップ!アハ!ハハハ!」
そいつは笑いながら、ジャングルジムを下りてきた。
口が、大きなOの形に、がばっと開いた。
口の中には、とがったVの字が、サメのキバみたいにずらりとならんでいる。
ざーっ。
音をたてて、ぼくの頭から血の気が引いた。
気ぜつしそうになるのを、ぐっとこらえる。
気を失ってたおれたら、あのキバで、
「ヤミー! ヤミー!」
って、ばりばり食べられてしまうかもしれない。
逃げたい。けど、体が動かない。
もう、だめかも。
アルファベットのおばけが、近づいてくる。
ぼくは、とうとう、目をつぶってしまった。