ピキッ。
小さな音がした。
回っていた公園が、足の下で、ピタリと止まったのがわかる。
うすーく、目を開けてみた。
前に立っているのは、あいつ、じゃない。
ようちゃんだ。
くつのかかとのはしっこで、ラムネスイッチをふんづけているけど、気づいていない。
ぼくは、そーっと、あたりの様子をうかがった。
あいつのすがたは、どこにもなかった。
「どうしたの」
ようちゃんが、不思議そうな顔をする。
「そっちこそ。英会話は?」
「うーん。おまえと、けんかしたまま行くの、いやだ、って思ってさ」
「ふーん」
ぼくは、ゆっくり立ち上がった。
まだ、足元が回っているみたいだ。
「もしかして、ぐあい悪い?」
ぼくの顔色を見て、ようちゃんが言った。
「ん。ちょっとね」
「帰ったほうがいいよ」
「うん」
ようちゃんは、公園のすみに転がっていた、ぼくのボールを取って来てくれた。