ラムネスイッチ(5/5)

文・円山なのめ  

「あのさ。ごめんな。遊ぶ約束、何度もやぶって」
「いいよ。もう」
二人いっしょに、公園を出た。

「おれさ。英会話、ほんとはやめたいんだ」
ようちゃんが、ぼそっと打ち明けた。
「先生が、テンション高すぎて、ついていけないんだよ」
「そうなんだ」

「シーユー、アゲイン!   ハ!   ハ!」
あいつの声が聞こえた気がして、ふりむいた。
だれもいない公園。
粉ごなの、ラムネスイッチ。
ビューッと、強い風が吹いてくる。
粉になったラムネスイッチは、あっという間に公園の砂にまぎれて、見えなくなった。

円山 なのめ について

東京都出身。早稲田大学教育学部卒。一児の母。子育てしながら文筆活動、里山保全活動をしています。 旧姓:西沢での著書に『イボ記』(小学館)。表題作は女子大生の足指のイボをめぐる異色青春小説。併録の『おしえない』は黄面と呼ばれる異形たちの国に迷い込んだ人間が出会う不条理奇譚。現在は電子書籍ストアにて発売中(イボ記』)。 HP:なのめのめ