ラーメン無料 早いもの勝ち(2/5)

文と絵・夏美

次の日の朝、ぼくはまたゆうびん受けにとんで行った。
「春休みなのに早起きねえ」とお母さんはあきれていた。
チラシは今日も入っていた。
またバラをけ散らしダッシュで店に向かう。

いきおいよくとびらを開けると、そこにはきのうとおなじ光景が・・・。
また犬がいた。
きのうのヤツとは少しちがう種類だ。
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きのうと同じ席に座り、右足ではしをつかみ、左足でレンゲを持って、すくったスープをふうふうと吹いている。
ラーメンの湯気で、毛が少しぺったりとしていた。

ぼうぜんとしているぼくにおじさんが気がついて、
「ああ、きのうのボク。悪いねえ、今日も二番目だよ」
と気のどくそうに言った。
ぼくが犬に目をやり、
「一番はあいつ?」
と聞くと、おじさんはうなずき、
「チラシ持ってきたしねえ」
と昨日と同じように答えた。
またもがっかりして店を出る時、犬がこちらを向いてニヤッと笑ったように見えた。

ラーメンを目の前にしながら、二日もチャンスをうばわれてしまった。しかも犬に。
今日こそ負けてなるものか!と走って乗り込んだ次の日も、犬がいた。
その次の日も犬がいた。くやしくてたまらなかった。

夏美 について

大阪出身。童話やミステリーが好きで、少年探偵団や少女探偵ナンシーで育ちました。自分もそんな感じの、子供がワクワクできるようなミステリーやサスペンスを書けたらいいなあと思っています。ようやく落ち着いてパソコンに向えるようになった主婦です。尊敬する人はグラン・マ・モーゼスです。