「よし、それなら店の開店前に待っていればいいんだ」
と、早い時間に向かったのに、もう犬がチラシを持って待っていた。
ぼくの顔をチラリと見て、また「ふふん」とバカにしたように鼻を鳴らした。
頭から湯気が出そうなほど腹をたてて、ドスドスと家に引き返す途中の道で、友達のマサオに会った。
「ものすごく不きげんな顔してるぞ」
いきなりマサオが言うので、ぼくはラーメンをただで食べそこねたことを説明した。
犬に負けたことは言わずに。
しかしマサオはふしぎそうに首をかしげた。
「そんなチラシ知らないぞ。うちには入ってない」
「そんなはずないだろ。おまえの家はうちのすぐウラっ側じゃないか。この辺の家にはきっと配られてるはずだ」
そう言ってぼくはチラシを見せた。マサオは首を振って言った。
「知らないなあ」