『織江りょう童謡集 とりになった ひ』
作 織江りょう
絵 山田和明
てらいんく
本書を開くと、様々な詩の主人公に出会えます。生き物、野菜、物にも命を感じて、詩の主人公とお話ができます。
コンパスの気持ち、ふうりんの気持ち、、物として見ているだけではもったいないです。
なぜなら、喜びに溢れているから。ふうりんくんを喜び(歌っている喜び)で見ていくと、もっと先が見えてきて、楽しさが広がります。
人の人生も毎日たくさんのことがあり、喜んだり悲しんだり忙しく過ぎていきますが、本当はこの世に存在するもの、全てそうなのでしょう。
読んでいると、読者の心もオープンになり、「出会うものを素敵だなーという思いで見つめたいなー」と思わずにはいられません。
『とりになった ひ』の詩は、とりが決意を持って、飛び立つ瞬間が描かれています。
人も、人が何かになる時(まわりにどう見られようとも)大切なのは、本人の「なる」という強い決意でしょう。
とりさんも、とりになるために、決意を持って飛び立ちます。心の描写が素晴らしく、読者もつい、飛び立つ鳥になってしまいます。
また山田和明さんの表紙絵も素晴らしく、鳥のまっすぐさ、健気さ、みごとに表現されています。
じっーと鳥の見ている方向を見てしまいますね。そしてそこから、絵に空の向こうがあることを感じます。
線だけで表現する挿絵も素敵です。しっぽが消え行くかんじの線「ひこうき」、三角だけで表現している「かかとのせのび」。シンプルな線だけの世界です。
心の機微の微妙なところを表現されている童謡集。
また大切にみんな仲間をして見る視線は、思いやりにも通じます。
イジメが深刻になっている現代だからこそ、多くの人に読んでいただきたいです。
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