スゥは何日も何日も泣き続け、やがて足元には大きな涙の湖が広がり、お城や街がその底に沈みました。
身体も石のように硬くなり、実から出る毒は紫色のきりとなって辺りを包みました。
空は鉄色の重たい雲におおわれて、陽の光をさえぎりました。
そして、悲しみ以外何もない場所で、ついにスゥは動かなくなりました。
うつむき、ただ時間だけが過ぎていく中、ふと足元から、声が聞こえてきました。
「・・・ください」
目を開けると、そこには、まだ幼いはだしの女の子が、じっとスゥを見上げていました。
きっと遠いところから歩いてやって来たのでしょう。服は汚れ、足は傷だらけでした。
「お母さんが、病気なんです・・・ウチにはお金もなくて・・・。でも、スゥの実を食べれば、すぐに元気になるってみんなに聞いて、ここまで来ました。だから助けてください」
女の子はまっすぐにスゥを見つめ、小さな声をふるわせながら、何度も
「助けてください」
とくりかえしましたが、スゥはずっと黙っていました。
何もこたえてはくれないスゥに、とうとう女の子は泣き出してしまい、
「・・・やっと、助かると思ったのに・・・早くしないと・・・お父さんもいなくて、私たち、2人だけなの・・・お願いします・・・」
そう言いかけ、その場に倒れてしまいました。毒のきりが、女の子を苦しめていました。
周りをよく見渡すと、そこには、何人も人が倒れ、うずくまり、苦しんでいました。
みんなスゥを信じ、彼の実を求めてやって来た人たちです。
・・・ドクン・・・
スゥの中で、何かが動きました。
ドクン
自分をしたってくれた人たちの顔を思い出しました。
ドクン ドクン
足元に倒れたこの女の子が、初めて出会った日のライラと重なりました。
ドクン ドクン ドクン
そして気付きました。
「僕は・・・まだ枯れたくない」