冬に開いてみたくなる絵本

NORDIC TALES
ジュナイダ・作
サンリード 刊

冬という季節に、そっと開いてみたくなる絵本が、この『NORDIC TALES』だ。まっ白な背景の表紙、静謐でノスタルジックな空気が漂い、じっと見ていると、身体の内側から、ほんのり温まってくるような色彩の数々。

作者のジュナイダさんは三越のクリスマスキャンペーンなどの絵で知られているが、私が初めて見た絵は、黒い背景に鉱石のドレスをまとった人たちが描かれた画集だった。

いい絵だな、と思った。日本じゃなく、どこかヨーロッパあたりに似合いそうな絵。それもなるべく緯度の高い地域・・・。
この本のためにジュナイダさんが選んだモチーフは、まさにそんな国、北欧の三国だった。
フィンランドのトーベ・ヤンソン、スウェーデンのセルマ・ラーゲルレーヴ、デンマークのH.C.アンデルセン。日本でもよく読まれている北欧の三人の作家に焦点を当て、それぞれの書いた物語に、ジュナイダさんが絵をつけている。

物語は断片的で、絵は象徴的。絵と絵の間の、文章だけのページさえ、森の色、岩肌の色、苔の色、砂の色・・・という具合に、物語をつなぐ一筋の道になっているのが美しい。

田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ