ジュナイダさんの絵本には、実際に描かれているものの他に、いつも不思議な扉が隠されているように思える。それを見つけて扉を押せば、奥にある別の世界へ通じる。『NORDIC TALES』には、北欧へとつながる扉が確かにあった。その向こうに、ひんやりした風、さわさわ揺れる木々を感じ、湖に舞い降りる鳥の羽音を聞くことができる。
本に挟まれているリーフレットによると、ジュナイダさんが実際に北欧へ取材に出掛けたのは夏らしいが、大海原の果てに忘れ去られた夏の島を描いても、その遥か下には冷えた黒い空間が広がっている。静かで、少し寂しい。そんな雰囲気が一番似合うのが冬という季節で、だからこの絵本は冬に相応しい気がする。
トーベ・ヤンソンといったら「ムーミン」しか読んだことが無い私だけれど、これからこの絵本に載っている彼女の他の作品もじっくり読んでみようと思った。読書の世界も広がる絵本だ。