❖やさしい温度の余韻が残る
読んでいるあいだ、私はふと、ある小学3年生が描いた一冊の絵本を思い出しました。タイトルは『わたしのきつおん』(まりちゃん 作)。こちらは、自分の特性を「知ってもらう」ことから関係がひらけていく物語。知らせる勇気をもって一歩を踏み出すことで、友だちと仲良くなっていく体験が等身大の言葉で描かれ、読み終えたあと、やさしい温度の余韻が残ります。
同じ吃音をめぐる二冊でも、『ぼくは川のように話す』が自分の内なるリズムを肯定していく静かな旅だとすれば、『わたしのきつおん』は周囲と橋をかけるための大きなエネルギーを使う大冒険。前者は「ありのままでいい」と包み込むような温かさで、後者は「周りに知ってもらえることで、いっしょに歩ける」と希望を手渡してくれます。