同じ地球に生きるものとして

ある星の汽車

森洋子 作
福音館
2025年10月刊

美しくも切ない絵本でした。
まず、森洋子さんの鉛筆画の美しさに圧倒されます。モノクロではないけれど、華やかな色が使われていないのが、よりこの内容を際立たせています。

父親と汽車で旅をする男の子。汽車にはドードー、卵を大事に抱えたオオウミガラスの夫婦、リョコウバトの団体客など、たくさんの乗客が乗っています。
汽車が駅に止まる度、いろいろな乗客が降りていきます。
駅名は数字。

これは駅で降りた生き物が絶滅した年を表わしています。
つまり、この絵本は<絶滅してしまった動物たちを描いた創作絵本なのです。
わたしたち人間が原因で絶滅した生き物たち。
これから私たちは、地上の生き物たちを守るために何をしなくてはならないのか。

救いは止まった駅で乗りこんできたものがいたこと。
絶滅したと思われていたのに、発見され、今度は人間がそれを保護して増えていっている生き物がいるということです。

同じ地球に生きるものとして、わたしたちにできること、しなくてはならないことを考えるきっかけになる素晴らしい絵本でした。

宇都宮みどり について

宇都宮みどり(山庭さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト