大人から子どもへの大切なメッセージ

おちびのネル書影おちびのネル
バーバラ・クーニー 作・絵
掛川恭子 訳
ほるぷ出社

社会人になってから、私はバーバラ・クーニーの挿絵に惹かれて、絵本を集めていますが、『おちびのネル』もその中の一冊です。
実話を元に女性の社会進出を描いた絵本は、大人にとっては、成功哲学として読めますし、小さな女の子には、幼いころの好奇心が、将来の夢につながるというお手本になると思いました。

この絵本の主人公は、のちにフランクリン・ルーズベルト大統領(米)のファースト・レディーとなるエレノアですが、幼少期の呼び名はネル。ニューヨークの裕福な家庭の長女として生まれましたが、おかあさまの理想の女の子ではありませんでした。
しかしおとうさまは、ネルに事業の話を聞かせてくれたり、衣食住に困る子だもたちが住む地域へご馳走をふるまうお手伝いに連れて行ってくれたりと、世の中のさまざまなことを教えてくれました。
また両親のヨーロッパ移住を機に、親戚の家で過ごす疎外感、寄宿学校での生活、社交界デビューで感じたコンプレックスなど、ネルが精神面でも鍛えられていくさまが描かれています。

今の時代、幼いころから、両親と離れて暮らす子どもは多くはないかもしれません。しかし、幼いながらも、勉強の大切さ、階級や人種の違う人々との交流など、様々な経験を積んだネルは、おとうさまから届いた手紙を大人になってからも大切に保管していました。そこにはどんなメッセージが隠されていたのでしょうか。

ネルは寄宿学校でも恩師に恵まれました。その女史は、おとうさまと同じく、休暇の時にヨーロッパ各地の貧しい地域を訪ねるのに、ネルを同行させ、世界のとびらを開かせてくれたのです。

ネルが感じたコンプレックスは、様々な経験で克服されて、幼い頃、そして学生時代に育んだ好奇心とともに自信へつながっていったのです。裕福な家庭に生まれながら、贅沢三昧な暮らしを許さず、社会見聞をひろめるような機会をネルに与えた、おとうさまのお手紙での、陰ながらの後押しは素晴らしい教育だと思いました。

子どもは、大人に教えてもらわなければわからないことがたくさんあります。このような大人から子どもへのメッセージが、やがて、世界平和、貧しい人々への生活支援や教育制度、女性の社会進出など、大きな社会貢献として花開いたのではないでしょうか。
子どもころの小さな好奇心や疎外感、コンプレックスは、やがて人の痛みが理解できる、真の大人に成長する糧になるとも思いました。

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三輪桃加 について

兵庫県出身、東京都在住。お料理と絵本、明治~昭和初期のレトロな文化をこよなく愛す。自身の体調不良から毎日食べることの大切さを痛感し、大学で食物学(栄養学)を学び、シニア野菜ソムリエ(野菜ソムリエの最高峰)の資格を取得。 「真の"美"体質」をモットーにダイエットや食を通した健康・美容関連記事、食育絵本などを手掛けている。 ブログ:野菜&果物の美養栄養学