いよいよ、船は、ふたたび、海に出て、出来上がったわなを、太陽の沈む大穴にしかけました。
もちろん、自分たちまで海水と一緒に穴に落ちないよう、じゅうぶんに気を付けながら。
「太陽め、ここに入ったが最後だぞ」
やがて、夕方が来て・・・。
デンジャーン デンジャーン
ドンジャーン ドンジャーン
耳をつんざく恐ろしい音。
頭上からかぶさってくる、燃えさかる炎。
夕べの太陽は血のように真っ赤です。
水兵たちはふるえ上がりました。間近に見る太陽がこれほどそうぞうしく、これほど勢いのあるものだとは、考えもしなかったのです。
でも、黒ひげ提督は動じません。
「やつめが入ったら、そくざにわなの口をすぼめよ。それ、今だ!」
ところが、太陽はあみにおさまったまま、なおも、下へ下へと沈んで行くではありませんか。
「提督、このままでは、船ごと、われらまで引きずり込まれます! あみを切りはなさせてください!」
「ならぬ! みな、オールを取れ! 何としてでも、やつを引っぱりあげるのだ!」
水兵たちは手に手にオールを持って、力いっぱい、こぎました。
「こげや、こげ、命の限り!人間の力を思い知らせてやるのだ!」