このときです。ふと、太陽の音が止み、あたりは、しいんと、静かになりました。
「いったい、どうしたことだ・・・」
水兵たちは手を止めて、太陽に目をやりました。驚いたことに、太陽は、あみの目から、ふんわり、にじみ出て、どんどん、ふくらんで行きます。そのやわらかい光で、海も、空も、見渡す限り、きらきらと、赤く、まぶしくそまっています。なのに、なぜか、少しも熱くありません。それどころか、すがすがしい風さえ、吹いて来ます。
「ああ、何と美しいのだろう・・・」
提督や水兵たちは、あみもオールもすっかり忘れて、涙を浮かべ、ただ、うっとりと見とれていました。それがマガタの船隊の最後でした。
すとんと夕陽が落ちた時、「夕べの神殿」の人々が見たものは、夜空いっぱいの星の下を、たった一人の水兵が、けんめいに、泳いでくる姿でした。