太陽がほしかった王様(1/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

王様が食事をする時には、召使いたちが、1000皿のすばらしいお料理を並べました。「王様、どうぞ、お選びください」
「うむ。これとあれ。それから、あっちと、そっちと、こっち・・・」
王様は好きなお皿を指さします。それから、王様が食べ始めるのをあいずに、100人のお妃たちが音楽を演奏し、もう100人のお妃たちが歌い出します。そのお妃ときたら、みな、天女のように美しかったのです。
「ああ、いともけだかき、マガタの王様
王様よりも強く、慈悲(じひ)深きものはなし・・・」
それなのに、近頃、王様は、食事が少しもおいしくありません。きょうも、ため息をついて、首を横にふりました。

「その歌にはあいたぞ。別のにせよ」
お妃たちは、あわてて、歌を変えます。
「いともかしこき、われらの王様
背高く、そのかんばせは輝くばかり・・・」
王様は、「やめよ」と、手を上げました。
「歌は、もう、よいぞ!」
すると、ひかえの、さらに100人のお妃たちが出てきて、踊り出しました。それでも、王様は、「ふわあ~」と、大あくびをしました。
それからというもの、王様はあくびが止まらなくなってしまいました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに