『どろんこのおともだち』
バーバラ・マクリントック作・絵
福本 有美子訳
ぽるぷ出版
この絵本は、あるデパートで行われていたニューヨークの物産展で出会った絵本です。作者はニューヨークで活躍している絵本作家で、アメリカでは2002年に出版されています。
21世紀に入ってから誕生した絵本なのに、古き良き子どもの、自然の中での遊びや、お人形やぬいぐるみを大切なお友だちとして扱う姿が新鮮に映りました。
この物語の主人公はシャーロットいう小さな女の子。大親友のティディベア、ブルーノといつも一緒ですが、シャーロットはお部屋の中でおとなしく、ままごとや人形遊びをするタイプの女の子ではなく、庭や近所の森や丘を走り回る活発な女の子です。昆虫や鳥、木登りが大好きで、ときおり泥んこでお菓子作りのマネをするのが、せいいっぱいの女の子らしさでした。
そんなある日、シャーロットの元に、キレイなお人形が届きます。羽根飾りの帽子をかぶり、リボンのたくさんついたリネンのドレスを着た上品な佇まい。それは叔母さまからのプレゼントです。
本当は嬉しいシャーロットですが、お人形を自分の部屋に連れて行き、自分とブルーノの、お転婆遊びの説明と、普通の女の子のようにお茶会もしないと言い放つのです!
早速、お人形を庭に連れていきます。ママが大切に育てているダリヤの花に、そのお人形の佇まいが似ているので、ダリヤという名前をつけてあげました。どこかのご令嬢のようにすまして見えたお人形も、外で遊びまわるうちに、元気になったようです。しかし、シャーロットがダリヤに木の上からの眺めを見せてあげようと、木登りをして、高い枝の上に座らせると・・・。
その日の夜は、お人形をプレゼントしてくれた叔母さまが、夕食に見えることになっています。シャーロットはダリヤと一緒に、叔母さまにちゃんと会ってお礼が言えるのでしょうか・・・。
この絵本には、子どもたちだけで遊ぶ自由な発想や、一人の時間でもお人形やおもちゃを大切にしながら想像力を膨らませ、子どもならではの行動力や優しさがいっぱい詰まっています。
自分のお洋服が泥んこでも、ダリヤやブルーノの泥んこに気を遣い、ママの大切なお花を尊重してお人形の名前にしたり、シャーロットはきっと心の奥に優しを秘めた、活発で判断力のある女性に成長していくことでしょう!
そしてこの絵本を読んだ小さな読者たちも、そうあってほしいと思いました。