『ぺトラ』
マリア・ニルソン・トーレ 作・絵
ヘレンハルメ美穂 訳
クレヨンハウス
図書館で何気なく手に取った絵本がヒットでした!
ぺトラの体についている模様のブチが逃げ出すという奇想天外なお話。だけど、とっても温かい気持ちになるハートフルな絵本です。
表紙は、ちょっととぼけた顔のぺトラと、鼻さきにのった毛むくじゃらの小さな毛糸玉みたいなものが見つめあっています。
そう、これが、ぺトラの体の模様のブチなのです。
寒い冬の日、のそのそ起きだしたぺトラは、かがみをのぞいてなんかへんだなと思い、模様を数えてみました。すると、1000個あるはずの模様のブチがひとつ足りません。
ブチは外に出たくて窓ガラスにはりついて、雪の景色を見ていたのでした。でも、ぺトラにはブチの気持ちがわかりません。ここにいれば安心なのに、なぜ寒い雪の中に出ていきたいのでしょう。
ぺトラはブチをつかまえて、テープでくっつけようとします。逃げまわるブチに追いかけるぺトラ。走ってころんで部屋の中はめちゃくちゃ。
けれど、とうとうぺトラは、ブチの意思を尊重し、窓をあけてあげます。ブチは大喜びで外の世界へ飛び出して行きました。
ぺトラはときどき考えます。
「ブチは元気かしら? 外の世界は、どんな感じかな?」と。
やがて春がきて、窓の外で小さな音が・・・。
この絵本は楽しい展開で、小さい子が面白がって読めるでしょう。けれど、とても深いものが詰まっています。読む人によって、さまざまな受け止め方ができるのです。友だち、恋人、そして親子。
わたしは母親として心に響きました。ぺトラが子どもの自立を見守る親のように感じました。ラストのページも、とてもいいです。
作家はスウェーデン在住の女性で、イラストには北欧の香りが漂います。家具や小物、枕カバーや壁紙の柄もすてき。ぺトラのゆるーい姿が癒し系で、かわいいです。
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