『明日もいっしょにおきようね~捨て猫、でかおのはなし~』
穴澤 賢 文
竹脇麻衣 絵
草思社
本書は、大人向けの絵本であるが、どうしても親子で読んでほしいので紹介したいと思う。
日本では1年に約13万頭の犬や猫が殺処分されている(平成25年度環境省動物愛護管理室調べ)。ペットとして飼われていた子たちが、なんらかの理由で飼えなくなって捨てられたり、保健所に連れてこられたリ・・・。捨てられた犬や猫が子どもを産み、子犬や子猫が保健所に収容されるという繰り返し。平成10年代に比べると殺処分数は半減しているが、それでも1日に約350頭が処分されている計算になるのだ。
保健所の職員の方々は殺処分しなければならないというストレスにさらされ、保護活動に取り組むボランティアの方々は、救えない子たちの多さに心を痛める毎日。
他の先進国と比べると、あまりにも悲しく、恥ずべき状態をなかなか改善できないのが、私たちの国なのだ。
本書は、そんな日本のある町の保健所で起こった不思議なお話である。
保健所で処分を待つ犬や猫たち。最期を迎えようとする子たちに、おなかいっぱいに食べさせてあげたいとボランティアとして通う女性がいた。その人の名は、ノリコさん。
ある日、ノリコさんは一匹の大きなオス猫に出会う。顔が大きくて不機嫌な顔をしている。ノリコさんはその猫を「でかお」と名付けた。
顔に似合わず、おとなしくマイペース。でも食いしん坊。「でかお」はノリコさんになつき、ノリコさんも「でかお」に惹かれていく。家に連れて帰りたいが、もうノリコさんの家は保護猫でいっぱい。
何日か悩んだ末、家に連れて帰ろうと保健所に迎えにいくと、もう「でかお」は、黒いビニール袋に入れられ、冷蔵庫の中で冷たくなっていたのだった。
ノリコさんを待っていた「でかお」は、どんな思いで最期をむかえたのだろうか、どんなに怖かっただろうか・・・。想像するだけで胸が苦しくなる。
当のノリコさんは、どんな思いだったのだろうか。なぜもっと早く決心して迎えに来なかったのだと、自分を責めつづけた。しかしノリコさんの目の前で信じられないことが起こるのであった・・・。
本書はある保健所で実際にあったお話を、竹脇麻衣さんの柔らかなタッチの絵と穴澤賢さんの文で構成された絵本だ。ただ本当にあった不思議なお話として読んで終わらないでほしい。小さな命を大切にすること、そしてペットを飼うなら家族として責任をもって迎え入れることを親子で話し合ってほしいのだ。細やかながら、捨て猫の保護活動をしている者として、ぜひお願いしたい次第である。
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