◆自然の劇場の楽しさ
前回、ミヒャエル・エンデの「モモ」が学校で上演され、現代にあわせた解釈が一部でなされていた、ということを書きましたが、岩石劇場の演劇では、基本的に原作に忠実だったと思います。しかし、毎回感心したのは、舞台の使い方でした。
通常、劇場は長方体の何もない真っ黒な空間が想定され、ゼロから照明や舞台セットをしつらえていく発想です。ところがこの劇場は巨大岩石を利用して作られている。日本文化が得意とする創造力からいえば、対象物を何かになぞらえていく「見立て」がとても大切になってくる空間です。そういう創造性の対比から考えると、ドイツではかなり挑戦を要する空間かもしれません。
しかし、この岩石劇場、ピッピやロビン・フッドたちが縦横無尽に活躍する場所として、ぴったりでした。たとえば敵に追われるロビン・フッドは舞台袖へ消えたかと思えば、巨大岩石のてっぺんから現れ、「へへーこっちだぜ」なんていうシーンは、大人も子供もあっと驚く。