幼年童話の書き方~第1部「基本のキ」その8

話の終わりはだらだらと書かない
⑧からが「転」です。「転」は話の流れが大きく変わるところです。ここからいっきに緊張感を高めてクライマックスまで進めます。

この話では、それまで食べられる側だったこぶたが食べる側になります。その意外な展開に読者はおもしろさを感じるのですが、同時に「なんで?」とも思います。怖いおおかみから逃げていたこぶたがそのおおかみを食べてしまったのですから、「なんで、そんなことができたの?」と。

そこで、「承」で張っておいた伏線がじわじわと効いてくるわけです。「そういえば、3番目のこぶたは何度もおおかみをだしぬいて、おおかみよりも賢そうだったよなあ」と納得です。

⑩が「結」です。話の終わりはだらだらと書かない。短くすることで余韻が残ります。

おおかみを食べるのは残酷だと思う読者もいるかもしれませんが、2匹のこぶたが食べられているのですから、食べなければ自分が食べられてしまいます。おおかみを食べたことで永遠の幸せを手に入れることができたのです。「承」にはこれでもかというほどおおかみの所業が書いてあるので、この結末にも読者は納得です。

いくつかポイントを挙げましたが、いちばんだいじなのは「承」でたっぷりと読者を楽しませることです。書きだす前に「承」の準備をしっかりとしておきましょう。

 


野村一秋先生のインタビュー記事もぜひご一読を!

『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(1/3)
https://x.gd/etXKc
『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(2/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(3/3)
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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。