幼年童話の書き方~第1部「基本のキ」その10

その10「ナンセンス童話」

大嘘を楽しむ
おーい ペンギンさーん』(岡田よしたか・作 福音館書店)って、ご存じですか? これ、わたしが童話の創作講座でよく紹介する本なんですが。
近所の銭湯にひとりで出かけたたろうくんが、そこで服を間違えられてしまうという話でして。浴室から出てきて、さあ服を着て帰ろうと思ったら自分の服がなくて、脱衣場にあったのはペンギンの服(あの黒い、燕尾服みたいなやつ)。

つまり、ペンギンの子も銭湯に来ていて、たろうくんの服を着て帰ってしまったというわけです。そこでたろうくんはペンギンの子の服を着て、ペンギンの子を追いかけます。どこまでもどこまでも追いかけていって、ついには・・・。(この先が気になる方は本を読んでください)

これはナンセンス童話です。「ナンセンス」というのは、常識なんか無視した、なんの意味もないバカバカしいことで成り立っている物語世界なので、だれもがそんなことありっこないと思うような大嘘を楽しむのがナンセンス童話です。

とはいっても、なんでもありで書けばいいかというと、そんなことはありません。入り口はリアリティがあった方が、読者は物語の世界に入りやすいし、いったん入ってしまえば、楽しい話なので、その後がどんな展開になっても読者はついていけるんですよね。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。