その1『れいぞうこのなつやすみ』
ユーモア満載の楽しい本
初心者を対象にした創作講座で、よく「お話作りの基本」というテーマで話をします。創作には基本的なパターンがあって、Aが「ほんとうにあったことからお話をつくる」、Bが「『もし……だったら』からお話をつくる」、CはAとBがいっしょになったもの。まずはこれで短い作品を書いてみましょう、ということなのですが。
で、Bの「『もし……だったら』から話を作る」の説明のときに紹介しているのが、この本なんですね。これは「もし冷蔵庫がしゃべったら」「もし冷蔵庫が、夏休みがほしいと言ったら」という着想の話で、第1部その10で紹介した『おーいペンギンさーん』(岡田よしたか・作 福音館書店)と同じナンセンス童話です。
夏のある日、家の冷蔵庫が冷えなくなったと思ったら、突然しゃべりだして、「わたしもなつやすみをもらって、いっかいプールへいってみたい」(P23)と言います。主人公のけんいちも、おとうちゃんもおかあちゃんもびっくりです。この話、三人とも大阪弁だからか、冷蔵庫も大阪弁でしゃべるんですね。
「ええやんけ、ええやんけ。わかった。ほないこ」(P24)と、軽いノリでおとうちゃんが返事をして、冷蔵庫を連れてみんなでプールへ……という展開なんですが、四人のやりとりには生活感があふれています。セリフだけではなく考え方や行動にも生活感があふれていて、これが大阪弁にぴったりなんですね。ユーモア満載の楽しい本です。
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