幼年童話の書き方13 ~第2部「名作に学ぶ」その1

その1『れいぞうこのなつやすみ』

れいぞうこのなつやすみ  村上しいこ・さく、長谷川義史・え PHP研究所 2006年

ユーモア満載の楽しい本
初心者を対象にした創作講座で、よく「お話作りの基本」というテーマで話をします。創作には基本的なパターンがあって、Aが「ほんとうにあったことからお話をつくる」、Bが「『もし……だったら』からお話をつくる」、CはAとBがいっしょになったもの。まずはこれで短い作品を書いてみましょう、ということなのですが。

で、Bの「『もし……だったら』から話を作る」の説明のときに紹介しているのが、この本なんですね。これは「もし冷蔵庫がしゃべったら」「もし冷蔵庫が、夏休みがほしいと言ったら」という着想の話で、第1部その10で紹介した『おーいペンギンさーん』(岡田よしたか・作 福音館書店)と同じナンセンス童話です。

夏のある日、家の冷蔵庫が冷えなくなったと思ったら、突然しゃべりだして、「わたしもなつやすみをもらって、いっかいプールへいってみたい」(P23)と言います。主人公のけんいちも、おとうちゃんもおかあちゃんもびっくりです。この話、三人とも大阪弁だからか、冷蔵庫も大阪弁でしゃべるんですね。

「ええやんけ、ええやんけ。わかった。ほないこ」(P24)と、軽いノリでおとうちゃんが返事をして、冷蔵庫を連れてみんなでプールへ……という展開なんですが、四人のやりとりには生活感があふれています。セリフだけではなく考え方や行動にも生活感があふれていて、これが大阪弁にぴったりなんですね。ユーモア満載の楽しい本です。
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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。