その2『キツネのまいもん屋』
ワクワクドキドキの楽しい展開
今回は和製ファンタジーの名手と呼ばれる富安陽子さんの本です。この本も大阪弁ですが、大阪弁にも地域差がありまして、こちらは大阪の北部でしょうか。舞台は里山です。
町はずれでキツネの子と出会ったひさしは、せんべいを半分わけてやって、山の麓にあるキツネのまいもん屋(駄菓子屋)に連れていってもらいます。ひさしはそこで、子ギツネたちといっしょにくじを引いて……。
話がどんどん膨らんでいって素敵な結末も用意されていて、ワクワクドキドキの楽しい展開ですが、いいのはそれだけじゃなくて、このお話は人間とキツネたちとの関係性が温かくて、読後感がさわやかなんですね。
例えば、キツネの子と出会った場面はこんなやりとりで始まります。
「おせんべ半分くれたら、ええとこへつれてったるのになぁ」
キツネがわざと大きな声でひとりごとをいったので、ひさしはつられてききかえしました。
「ええとこって、どこやねん」
「そりゃ、おせんべたべてからでなくちゃ、おしえられへん」
(次のページに続く)