富安さんのお話の種
初対面で、しかも人間とキツネなのに、まるで毎日教室で顔を合わせているクラスメートとの会話のようです。お互いに相手に対する警戒心もなければ、人間と動物という垣根もありません。まいもん屋の場面でも、店主のはいいろギツネや店の中にいた子ギツネたちは、誰ひとり驚くことなく自然にひさしを受け入れます。
そこには、里山が人間と野生動物たちとの共生の場なんだという富安さんの思いを感じ取ることができます。この、読者が感じ取るということがポイントなんです! 作者の思いをセリフにして登場人物に言わせても説教臭くなるだけですからね。
『児童文芸』(2003年12月・2004年1月号)の仕事で富安さんにインタビューしたことがあるのですが。そのときの「書き始めるタイミング」という話が印象的でした。
富安さんはお話の種について、「このごろ、だいぶ我慢ができるようになって、苗床というか、自分の中である程度まで育てて、自生する力ができたときに書き始めるようになってきた。だから、出てきたときには、もうお話は自分である程度勝手に育っていく力を持っているので、書きだすとわーっとつながっていく」と仰っていました。
「自分の中で留めておくときが、すごく楽しい時間」とも。
★野村一秋先生のインタビュー記事もぜひご一読を!
『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(1/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(2/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(3/3)
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