幼年童話の書き方15 ~第2部「名作に学ぶ」その3

読者対象に合わせた書き方を

この後も、だれはこうした、それでどうなった、だれがこう言った、ああ言った、という叙述が続いて、軽快なテンポで話が進んでいきます。
心理描写もシンプルです。

きつねの こは、はやくちで そう いいました。(P12)
きつねの こが さけぶように いいました。(P30)
どしゃぶりの あめの したで、ぬれた ばけつを みていると、きつねの こは、なんだか なきたくなってきました。(P46)

といった感じで、大事な場面にひと言ずつ入れてあるだけです。これで、幼年の読者はきつねくんの気持ちがちゃんと読み取れます。いや、これだからこそ、きつねくんの気持ちがくっきりと浮かび上がってきて、よくわかるんですね。

題材選びだけでなく、読者対象に合わせた書き方をしなければならないというのも、大人の文学にはない子どもの文学の難しさだと思います。


野村一秋先生のインタビュー記事もぜひご一読を!

『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(1/3)
https://x.gd/etXKc
『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(2/3)
https://x.gd/oTLHR
『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(3/3)
https://x.gd/sq5xe

野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。