幼年童話の書き方16 ~第2部「名作に学ぶ」その4

著者のやさしさ

「学校不適応」というレッテルを貼られそうですが、幼稚園や保育園に通ったことがなかったらこうかもしれないなと思えるほど、きらちゃんの言動は自然で、違和感がありません。

作者の北川チハルさんは、入学前の子どもたちに「小学校は先生も友だちもみんなやさしいから、心配しなくていいんだよ」と伝えたかったのかもしません。わたしは、小学校生活にすっかり慣れた1年生にも読んでもらいたい本だと思いました。物語の世界に入っている間はきっと「おりこうさん」から解放されるんじゃないかなあ。

こういうきらちゃんを主人公にしてお話を書いたところに、北川チハルさんのやさしさを感じます。作品には自ずと子どもとの関わり方が表れるもの。子どもに寄り添っている北川さんならではの作品です。

1年生を担任していたとき、「おとうさん」と声をかけられることがよくありました。「ねえねえ、おとうさん、あっ、ちがった、先生」なんて感じで。一度だけ、「おかあさん」と言われたこともありましたが。


野村一秋先生のインタビュー記事もぜひご一読を!

『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(1/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(2/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(3/3)
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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。