幼年童話の書き方17~第2部「名作に学ぶ」その5

🦊作者の狙いは

きつねが主人公なので擬人化の手法を使って書かれています。第1部その9「違和感にご用心!」で説明した擬人化の度合いでいうと、「自然の中で動物の特性をちゃんと備えて暮らしていて、人間の感情だけを与えた擬人化」ということになるでしょうか。

擬人化の利点は、読者が主人公に親しみを感じて興味を持ちやすくなること、読者がその動物に対して持っているイメージをお話の中で利用できることですが、戸田和代さんのねらいはそれだけではないと思います。

我が子に対する母親の愛情を描いたのがこの本です。子ども読者が、病気で子どもを亡くした母親の気持ちに共感するのではなく、母親の愛情に気づく話です。だからこその擬人化だと思います。
次のページに続く

野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。