幼年童話の書き方18~第2部「名作に学ぶ」その6

その6『まじょ子』シリーズ--やってみたいことをたっぷり用意
『まじょ子』シリーズ
(藤 真知子・作 ゆーちみえこ・絵 ポプラ社 1985年~2018年)

シリーズ第1巻の『まじょ子どんな子ふしぎな子』の発行が1985年で、最終巻の『まじょ子とステキなおひめさまドレス』の発行は2018年です。33年という期間もすごければ、全60巻という数もすごいです。
シリーズがこんなにも長く続いたのは本が売れるから。つまり、読者である子どもたちの絶大な支持があるということです。今回は、このシリーズの人気のひみつを探ります。

◆まじょ子といっしょに遊んでいるような感覚

読んで最初に気づくのは主人公のこと。まじょ子は主人公じゃないんですよね、『まじょ子』シリーズなのに。どの巻もまじょ子とコンビを組んで活躍する人物が主人公になってまじょ子を語るというスタイルになっています。なので、いつも主人公の前にまじょ子が現れるところから話が始まります。

語りをこのスタイルにしたことで、読者は主人公といっしょにまじょ子を迎える側にいて、人間の世界にやってきたまじょ子といっしょに遊んでいるような感覚になれます。この、迎える側の視点がポイントでしょうか。

毎回、まじょ子を見た主人公は「くるんとしたひとみのかわいい子」と語ります。まじょ子はだれもが認めるアイドルのような女の子なんですね。でも、魔女とはいっても8歳の子どもなので難しい魔法は使えません。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。