幼年童話の書き方19~第2部「名作に学ぶ」その7

かめのまめが語る

主人公は空き家の庭の池に棲むかめです。日本が戦争をしていたころからずっと生きている長生きのかめで、名前を「まめ」と言います。このまめが自分の体験を語ります。冒頭の3行だけ一人称の語りですが、他は三人称多元視点です。なので、語り手は主人公の心情だけでなく、他の人物の心情も語ります。

空き家に引っ越してきた2年生のかえでちゃんと仲良くなったまめが、かえでちゃんに戦争の話をするという展開です。前半はまめの紹介やかえでちゃんとの交流が書かれていて、戦争の話が出てくるのは後半からです。主人公がかめだけに、ゆったりとしたペースで進んでいきます。

まめがかえでちゃんと話す場面では、まめやかえでちゃんの心情も語られます。読者はふたりの気持ちを想像しながら会話を聞いているという感じでしょうか。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。