◆戦争は、かなしみのもと
後半から戦時中の生活が語られます。当時、この家に住んでいたまつこちゃんの家族の話が易しいことばで語られるのですが、説明が多く、幼年の読者にはちょっと難しいかもしれません。でも、これを外すわけにはいきませんからね。
3分の2を過ぎたころ、原爆投下の場面に入ります。まつこちゃんの家は町から離れていたので、地面が揺れて、きのこ雲が見えた程度でした。だから、まつこちゃんとお母さんは無事だったのですが、中学生のお兄さんは勤労動員で町に出かけていました。お母さんはすぐにお兄さんを探しにいきましたが、遺体すら見つけることはできませんでした。
町の様子は、まめのセリフで「近所のおじさんが、あれは新型のばくだんで、たった一発でまちがぜんめつしたそうな、と小声ではなしているのもききました」(P48)と書かれているだけです。悲惨な場面は描かれていません。お母さんとまつこちゃんの悲しみがまめの思い出として語られます。
その場にいたまめも泣きました。まめはこのときから、自分の体験をだれかに伝えるために人間と話をすることができるようになったんですね。
終盤で、まめはかえでちゃんに「戦争は、かなしみのもとです」(P60)と思いを伝えます。このことばに説明は要りません。かえでちゃんだけでなく、幼年の読者もきっとうなずくと思います。
★野村一秋先生のインタビュー記事もぜひご一読を!
『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(1/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(2/3)
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