幼年童話の書き方25~第3部「自作を語る」その1

その12『のらカメさんた』--捨てる人間が悪い!


(野村一秋・作 かわむらふゆみ・絵   小峰書店・2004年)

頭に浮かんだのは

この本は2001年9月に毎日新聞(大阪本社管内版)で連載された「のらカメさんた 第1話 おれにまかせろ」を書籍化したものです。毎日新聞ではこの年に「読んであげて」という童話の連載コーナーが始まりました。これは月替わりで作家が交代していくという連載で、わたしが9月を担当したということです。1回で800字、1か月で幼年童話3冊分になるので、『のらカメさんた』で3話書きました。

連載の話をいただいたときに、まず頭に浮かんだのは家で飼っていたカメでした。中学生だった息子が学校帰りに河原で拾ってきた甲長5センチほどのミドリガメです。片足が少し不自由でかわいそうだったからと持ち帰ったのですが、こいつがとても元気なヤツで。飼ってみて気づいたのですが、カメはけっしてのろまじゃないんですよね。毎日、カメの世話をしながら、のろまのイメージを払拭するような話を書きたいと思っていたところだったので、ミドリガメを主人公にしました。

ミドリガメは外来種です。当時、ホームセンターなどで売られていたこともあって、安易に飼われ、安易に捨てられていました。池や川に捨てられたミドリガメが在来種であるイシガメやクサガメを駆逐して生態系を乱していると問題になっていました。確かにそうなんですが、それはミドリガメが悪いんじゃなくて、ミドリガメを捨てる人間が悪いわけで。この話が「のらカメ」問題について子どもたちが考えてくれるきっかけになればと思いました。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。