幼年童話の書き方26~第3部「自作を語る」その2

その2『しょうぶだ しょうぶ!』--わたしがネタを拾うのは


(野村一秋・作 ささきみお・絵   文研出版・2004年)

家族で食卓を囲んで

小学校に20年も勤めていたんだから、作品のネタはいっぱいあるんじゃないかと聞かれることがあるのですが、自分が関わったエピソードは事の顛末を知っているだけに話が膨らみません。

わたしがよくネタを拾ったのは家族の会話です。毎晩、家族で食卓を囲んで、二人の子どもと教員だった妻が、きょうはこんなことがあったと語り合うのを聞きながら、ネタ探しをしていました。

わたしがネタとして拾うのは、「こんなことがあった」の一言だけです。詳しくは聞きません。この一言から話を作っていきます。今回紹介する『しょうぶだ しょうぶ! -先生VSぼく-』も、そうしてできた本です。ある日のこと、妻が、「きょう、男の子が担任の先生のことを『あいつ、うるせえんだよな』と、つぶやいていたんだよね」と。

子どもたちに怒鳴る先生がいます。特に若い男の先生に多いでしょうか。子どもたちを静かにさせるには怒鳴るのが手っ取り早いので、経験の浅い先生ほどよく怒鳴ります。じつは、わたしもそうでした。

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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。