幼年童話の書き方27~第3部「自作を語る」その3

やさしさが力になって

つぎの日、「びょういんで、なんて いわれた?」と聞くしんちゃんに、さよこ先生は「ミルクは……、ミルクは……、にゅういんしたの」(P41)と。「えーっ!」と驚いたのはしんちゃんですが、なっちゃんも声をあげそうになりました。ミルクが入院していないことを知っていたから。

なっちゃんは、しんちゃんが本当のことを知ったらどうなっちゃうかと心配しますが、嘘をついてしまったさよこ先生のことも心配になってきました。
わたしはこの本で、なっちゃんのやさしさと、そのやさしさが力になって成長していくなっちゃんを描きました。

読者(大人)から「先生も嘘をつくんだ。それが意外だった」という感想を聞くことがあるのですが、わたしがこの本を書いたのは、先生が嘘をついたことではなく、その嘘の中身がおもしろいと思ったからです。死んじゃったと言えずに「入院しちゃった」と言ったのが。元教員にとっては、先生が嘘をつくのはそれほど驚くようなことじゃないんですよね。

N先生が子どもたちに嘘をついてしまった詳しい経緯は、出版されてから妻に聞きました。で、N先生には謹んでこの本を進呈しました。


ハムスターが回し車を動かしている動画

野村一秋先生のインタビュー記事もぜひご一読を!
『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(1/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(2/3)
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『ミルクが、にゅういんしたって?』著者・野村一秋先生に聞く(3/3)
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野村一秋 について

(のむら かずあき):1954年、愛知県に生まれる。教員として小学校に勤務した経験のもと、子どもの目線に立った作品を生み出している。日本児童文芸家協会会員。日本児童文学者協会会員。日本文藝家協会会員。主な作品に『天小森教授、宿題ひきうけます』(小峰書店)、『しょうぶだ しょうぶ!』(文研出版)、『ミルクが、にゅういんしたって?!』『4年2組がやってきた』(共にくもん出版)などがある。