『ぼちぼちいこか』
マイク・セイラー 作
ロバート・グロスマン 絵
いまえ よしとも 訳
偕成社
1980年7月刊

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❖その絶妙なバランスが
最近、生活で大きな変化があり、少し息切れをしていました。そんな日々が続いていたある午後、公園のベンチに腰をおろし、空を見上げてみる。深呼吸をすると、ほんの少しだけ気持ちが落ち着くのですが、また心のモヤモヤが静かに押し寄せてきます。
そんな時、ふと6年前に子どもに読み聞かせをしていた一冊の絵本を思い出しました。それが、『ぼちぼちいこか』です。
主人公のカバは、何をやってもうまくいきません。消防士になろうとすればハシゴが折れ、船乗りになろうとすれば船が沈む。飛行士になれば墜落してしまう。そのたびに「あかんわ」と諦める姿に、思わずクスクスと笑ってしまいます。でも、失敗しても失敗しても、次々といろんな分野に挑戦し続けるその姿には、不思議と勇気をもらえるのです。
少しコミカルに描かれたカバの表情と、やわらかく優しい色合いの絵が、失敗の重さを軽やかに受け止めてくれます。深刻になりすぎず、でも決して投げやりでもない。その絶妙なバランスが、この絵本の温かさを作り出しているのだと思います。
(次のページに続く)







