❖人生は、成功ばかりではない
多くの物語では、主人公が困難を乗り越え、何かを成し遂げ、成長していく姿が描かれます。でも、このカバは違います。挑戦の途中、絵本の中では何一つ成し遂げることなく終わります。そして最後に、この題名の通り「ぼちぼちいこか」という、やさしい関西弁で締めくくられるのです。
うまくいかない時もある。それでいい。失敗したって、また次がある。ぼちぼちやっていこう。そんな少しだけ前向きな声かけが、プレッシャーにもならず、心をそっと軽くしてくれます。完璧を求めすぎて疲れてしまった時こそ、この絵本が持つやさしさが、深く心に染み入るのだと思います。
子どもに読み聞かせていた頃は、カバの失敗する姿を一緒に笑っていただけでした。でも今、改めてページをめくると、この絵本が伝えようとしていたメッセージの深さに気づかされます。人生は、成功ばかりではない。むしろ、うまくいかないことの方が多いかもしれない。それでも、「ぼちぼち」と歩みを進めていくことの大切さを、このカバは教えてくれているのです。
読み終えた後、また公園に行きたくなりました。今度は、少しだけ肩の力を抜いて、空を見上げられる気がします。「ぼちぼちいこか」その言葉を心の中で繰り返しながら、自分のペースで歩いていこうと思えました。








