『ももいろのきりん』
中川李枝子 作
中川宗弥 絵
福音館書店
この本は、私が幼稚園の卒園式にいただきました。大きくなって、人間関係に悩んだ時や、自分の居場所がわからなくなった時に、いまだに読み返す、私にとっての大切な一冊が本書です。
大人になると有益な情報を知った時に独り占めしたくなったり、ビジネスの場では早い者勝ち!という場面にも多々遭遇します。しかし、自分が悔しい思いをしたとしても、その思いをすぐに手放し、自分や相手を許したり、感謝の気持ちに置き換えれば、一ついいことが起こったことになります。子どもの頃は普通にできていたことを思い出させてくれるのが本書です。
ある日、るるこは、お母さんから、とっても大きなピンクの紙をもらいます。その紙で、世界一大きくて美しく、強いピンクのきりんを作りました。きりんの名前はキリカ。しかし紙でできたキリカは、ある夜、雨で、長い首がぬれて、色もはげてしまいました。その後、お日さまの光で乾き、元気になったキリカは、るること一緒にクレヨンの山に行きます。
そこでは、赤、青、水色、黄色、クリーム色など、さまざまな色に塗られた動物と出会いますが、みんな色がはげています。なぜかと聞くと、クレヨン山の頂上に、意地悪なオレンジ色のクマがいて、自分に用のない色のクレヨンまで独り占めしているとのこと。 その話を聞いたキリカは、るるこや仲間の応援を背にひとりでオレンジのクマに挑みます。
キリカの活躍で、仲間たちも自分の“色”を取り戻し、るるこも精一杯、動物たちに貢献しますが、嬉しさに浮かれすぎた動物たちは・・・。その後、るるこに許してもらった動物たちは、“あるもの”をお礼に渡します。しかし、るるこは独り占めせずに、キリカが一番困っていることと、仲間たちのために“あるもの”を使いました。
このお話は、読んだ人々に、美しい教訓を与えているように思います。
・欲しいものを独り占めすると、罰を受ける。
・やってもらって当たり前だと思っていたら、人を困らせ、自分も困ることになる。
・楽しく美しいものは、みんなで分かち合う。
本書は出版されてから、今年でちょうど50年! 何気ない、子どもの頃の友だちとのケンカや仲直り、分かち合いの精神をカラフルでオシャレな動物たちを通して描かれています。そして小さな女の子のオシャレ心もくすぐる挿絵にも注目です! これからもずっと色あせず、読み継がれていく作品だと思います。
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