春を泳ぐヒカリたち(4/11)

文・高橋友明  

春はときおり、日中にしか顔を見せないことがある。
朝晩はまだ寒い日があり、暖房が必要なときもあった。
今朝がそれで部屋の中でも、息がほぅっと白くはき出されて、空中で消えてゆく。
ぼくは学校にいく準備を始めていた。
準備を始めるとすぐにべにちゃんが、むかえにきた。いつもより15分も早い。

「たけちゃん!むかえにきたよー!」
ぼくらは幼稚園の頃から、毎日一緒に通園・通学している。
べにちゃんの声は、いつもより大きくはずんでいる。上機嫌のときの声だ。
「はーい! 今行くねー!」

窓から顔を出してべにちゃんにいう。
急いで教科書やふで箱をかばんに入れ、階段を下りる。
「今日は早いんだねー。」
玄関で靴をはきながらいいドアを開けると、べにちゃんが、いつも通りに笑って立っているはずだった。

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。