春を泳ぐヒカリたち(4/11)

文・高橋友明  

「わたし、伊集院くんに、手紙を書いたの。・・・わたしの初めてのラブレターよ。それで、この手紙をたけちゃんから伊集院くんに渡してもらいたいの。わたし、とてもじゃないけど、自分で渡すなんてできそうにないから。ほかの人に知られるのもいや。でもたけちゃんにだったら頼めると思って。だめ?」
ぼくは、まかせて、と短く返事をした。声が少しふるえていたと思う。

ぼくはたくさんの嘘をついてしまっている。ぼくがべにちゃんに嘘をつくときは、決まってぼくの胸がぺしゃんこになるときだ。

べにちゃんは、かばんの中からうす桃色の封筒を取りだして、ぼくに差しだす。
ぼくは受け取るよりほかない。
今まで、べにちゃんの恋を応援するようなことばかりいっていたのだから。
受けとると、うす桃色の手紙はブラックホールのように重たく感じた。

高橋友明 について

千葉県柏市在中。日本児童教育専門学校卒業。 朝昼晩に隠れているその時間ならではの雰囲気が好きです。やさしかったりたおやかであったり、ピリッとしていたりする。 同様に春夏秋冬や天気や空模様も好きです。 そうしたものを自分の作品を通して共感してもらえたら幸いです。