学校。いつもより15分前にぼくは教室につく。べにちゃんとはクラスが違うので、ぼくは朝から、大いに悩むことができた。
授業なんてそっちのけ、給食に出た大好きなミートボールも残し、みんなから「調子が悪いの?」「早退する?」という言葉に、「ううん」とか「大丈夫だから」としかいえなかった。
ぼくはずっと頭をかかえて、うつむいていた。顔面蒼白(がんめんそうはく)とは今のぼくの表情のことをいうのだろう。
べにちゃんから渡されたうす桃色の手紙。これをネクタイに渡したら、ぼくとべにちゃんは、どうなってしまうのだろう。
どうしたって、よくなるということはないと思った。
――放課後。
とにかくぼくは、ネクタイを屋上へ呼び出した。
空には重たそうな雲でいっぱいだった。
「ふふん、なんだい? 竹春がぼくに用だなんて、なにごとだろうね?」
「・・・・・・」
「うん? なんなんだい竹春、変な顔して? ぼくはキミらと違っていそがしーんだから、早くしてくれないかなぁ、ふふん」
ぼくはべにちゃんのうす桃色の手紙を持った右手を、ゆっくり持ち上げる。
うす桃色の手紙は、やはりブラックホールのように重たくて、ぼくは本当に一生懸命持ち上げた。
「なんだい、これ? くれるのかい?」
ぼくは黙って顔を上げる。