「・・・うぅ、ちくしょう、みっともなくったってしょうがないじゃないか!! ちくしょう!!」
・・・この取っ組み合い、ぼくが悪いっていうことはわかっているんだ。
でも、どうしようもなかった。
ぼくはネクタイのげんこつをよけもせず、いいようにもらいながら、ネクタイに自分のげんこつをぶつけ続けた。
さわぎを聞きつけた生徒が輪を作り、やがて先生が止めに入った。
「なにをやっている! 離れろ、離れなさい! いい加減にやめないか!」
先生が、ぼくらの間にわって入った。
ぼくの顔はあざや鼻血で、ひどいことになっていた。
ネクタイも左目のまわりに紫色の丸を作り、口元を少し切って血を流していた。
ネクタイは、肩でゼイゼイと息をしながら、ぼくをにらみつづけている。
・・・ぼくはネクタイを見ることができず、げんこつを硬く握ってうつむいているしかなかった。
「おまえら! いったいなんだって、こんなになるまでけんかしたんだ!?」
ネクタイは口元を持ち上げ、首を軽くふって見せる。憎らしいほど、余裕の仕草。
「なんでもないですよ、ちょっとした意見の相違ですから。もう決着はつきました。ねぇ竹春? ふふん、それじゃあぼくはかかりつけの病院にいかないと。じゃあね、みなさん」
それだけいうとネクタイは、さらりと去っていった。
去りぎわ、かばんを拾うとき、ネクタイは床に落ちていた、うす桃色の手紙を拾っていった。
このときのぼくは、そのことに気づけなかった。
怒りが先に立ってどうしようもないありさまだったのだ。