月夜のネコかいな(4/4)

文・夏美  

「カニに見える人もいるんだね」
「ああ、ヨーロッパの方だ」
トモちゃんは空を見上げました。お月さまがいます。
「ネコに見えるよ」
「あたりまえだろ」
お面屋がフンと鼻を鳴らしました。

そして、巾着に硬貨をしまいながら言いました。
「さあ、今日はもう店じまいだ。あんたも帰んな」
「お面屋さんの顔はどんなの?」
トモちゃんが聞くと、
「お面屋さんの顔さ」
お面屋が答えました。
「見せてよ。やっぱり卵みたいに真っ白なの?」
「ふん、お月さまじゃあるまいし」
「じゃ、見せてよ」
お面屋は手袋を取りました。

夏美 について

大阪出身。童話やミステリーが好きで、少年探偵団や少女探偵ナンシーで育ちました。自分もそんな感じの、子供がワクワクできるようなミステリーやサスペンスを書けたらいいなあと思っています。ようやく落ち着いてパソコンに向えるようになった主婦です。尊敬する人はグラン・マ・モーゼスです。