「あ」
けむくじゃらでした。肉球もありました。その手でお面を外しました。
「チャップだ」
トモちゃんがおもわず叫びました。とてもよく似ていたのです。
「ケチャップじゃないよ」
「違うよ、死んだネコの名前」
「死んでないさ、悪いけど」
「そうなの」
「天国から来ただけさ」
「じゃ死んでるんじゃない。なんでネコがネコのお面つけてるの」
トモちゃんが聞くと、ネコのお面屋は目をきっと細めて気分を害したような顔をして言い返しました。
「おかしいかい。人間だって人間のお面つけてるじゃないか」
「そういえばそうだね」
ネコはトモちゃんの顔を見て、
「でもあんたもネコなんだろ」
と変なことを言いました。
「え?」
トモちゃんがわけを聞こうとしたのに、ネコはさっさと台をたたんで帰り支度を始めました。
気がつくといつのまにかお面のたなが消えていました。
「じゃあな、早く帰んな。祭りが終わるよ」
そう言うと、ネコは硬貨を入れた巾着袋を手にさげて、林の奥へ姿を消しました。
トモちゃんは、あわてて元来た方へ向かって走りだしました。
どのくらい時間がたったのかわかりませんが、前方に明かりが見えてきました。まだお祭りは終わってないようです。