キリキリキリキリキリ・・・。
からっぽのおなかが、しめつけられるように痛む。体に力が入らない。
「もぉ歩けないよぉ・・・」
男の子のつぶやきは、弱々しく、木と木の間に消えていった。
リュックに入っていたおにぎりも、クッキーもチョコもキャンディーも、もうぜんぶ食べてしまった。
さいしょに、このリュックをしょった時には、「重いな。おにぎりが大きすぎるんだよ」なんて思ったのに、今は、軽くなったリュックがうらめしい。
男の子は、迷子だった。もう3日も前から、森の中をさまよっている。
(だからぼくは、こんなイベント、いやだって言ったのに。家でゲームでもしてりゃ、こんな目にあってないのにさ)
森の中のハイキングコースを歩いて、広場でお弁当を食べる。そんなイベントに、パパが勝手に申し込んでしまった。
(ぼくが、やせっぽちで、体力がないって?『子どもはもっと、太らなきゃだめだ。たっぷり食べて、しっかり運動だ!空気のおいしい森なら、ごはんもおいしいぞ』とか言っちゃって。大きなおせわだよ)
パパが、一人で行けばいい。
そう言ったのに、親子で参加するイベントだからと、ムリヤリ連れてこられたのだ。
はらが立ったから、ちょっと困らせてやろうと思った。こっそりコースをはずれて、広場に先回り。パパたちが着いたら、「やぁ、おそかったね」なんて、すずしいかおで言ってやろうと思ってたのに・・・。