森のまいご(1/3)

文と絵・ひなたのんき

キリキリキリキリキリ・・・。
からっぽのおなかが、しめつけられるように痛む。体に力が入らない。
「もぉ歩けないよぉ・・・」

男の子のつぶやきは、弱々しく、木と木の間に消えていった。
リュックに入っていたおにぎりも、クッキーもチョコもキャンディーも、もうぜんぶ食べてしまった。
さいしょに、このリュックをしょった時には、「重いな。おにぎりが大きすぎるんだよ」なんて思ったのに、今は、軽くなったリュックがうらめしい。

男の子は、迷子だった。もう3日も前から、森の中をさまよっている。
(だからぼくは、こんなイベント、いやだって言ったのに。家でゲームでもしてりゃ、こんな目にあってないのにさ)

森の中のハイキングコースを歩いて、広場でお弁当を食べる。そんなイベントに、パパが勝手に申し込んでしまった。
(ぼくが、やせっぽちで、体力がないって?『子どもはもっと、太らなきゃだめだ。たっぷり食べて、しっかり運動だ!空気のおいしい森なら、ごはんもおいしいぞ』とか言っちゃって。大きなおせわだよ)
パパが、一人で行けばいい。
そう言ったのに、親子で参加するイベントだからと、ムリヤリ連れてこられたのだ。

はらが立ったから、ちょっと困らせてやろうと思った。こっそりコースをはずれて、広場に先回り。パパたちが着いたら、「やぁ、おそかったね」なんて、すずしいかおで言ってやろうと思ってたのに・・・。

ひなたのんき について

東京都出身です。空と、水のある景色と、物語の世界が大好きです。 絵は描けないけど絵本が描きたいので、絵本の文章を編集さんに見てもらったりしています。 好きな絵本作家は、かがくいひろしさん、長谷川義史さん。 好きな童話は、寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」、「こまったさんのオムレツ」。 好きな物語の出だしは、安房直子さん作「きつねの夕食会」の「新しいコーヒーセットを買ったので、きつねの女の子は、お客をよんでみたくてたまりませんでした」。 こんな風に人に衝撃を走らせる一文を、自分もかきたいと思います。