男の子は、イガをむけば、中から甘ぐりが出てくると思っているらしい。
もちろん、出てこないのだが、オオカミも、そんなことは、とんと知らない。
「おう、きっとそうだ。トゲ、ぬいてみろ。それか、折ってみるとか」
オオカミにたきつけられて、男の子は、イガのトゲを抜こうと、いじくってみる。が、
「いたたっ。いたいっ!」
トゲがささって、いたいばかり。中身なんて、出せそうにない。
「何だよ、これ。どうすればいいのさ。こんなもの、食べられないよ」
「都会っ子め、ぜいたく言うな。はらがへってるんだろ」
「ムリだよ。パックのくりにしてよぅ」
ヒィヒィ泣き出す男の子。オオカミはまた、ため息をついた。
「しょうがないな。ほかの食べものを、探してやる」
くりをあきらめて、オオカミは、もう一度男の子のシャツをくわえた。