森のまいご(2/3)

文と絵・ひなたのんき

男の子は、イガをむけば、中から甘ぐりが出てくると思っているらしい。
もちろん、出てこないのだが、オオカミも、そんなことは、とんと知らない。
「おう、きっとそうだ。トゲ、ぬいてみろ。それか、折ってみるとか」
オオカミにたきつけられて、男の子は、イガのトゲを抜こうと、いじくってみる。が、
「いたたっ。いたいっ!」
トゲがささって、いたいばかり。中身なんて、出せそうにない。

「何だよ、これ。どうすればいいのさ。こんなもの、食べられないよ」
「都会っ子め、ぜいたく言うな。はらがへってるんだろ」
「ムリだよ。パックのくりにしてよぅ」
ヒィヒィ泣き出す男の子。オオカミはまた、ため息をついた。
「しょうがないな。ほかの食べものを、探してやる」
くりをあきらめて、オオカミは、もう一度男の子のシャツをくわえた。

ひなたのんき について

東京都出身です。空と、水のある景色と、物語の世界が大好きです。 絵は描けないけど絵本が描きたいので、絵本の文章を編集さんに見てもらったりしています。 好きな絵本作家は、かがくいひろしさん、長谷川義史さん。 好きな童話は、寺村輝夫さんの「ぞうのたまごのたまごやき」、「こまったさんのオムレツ」。 好きな物語の出だしは、安房直子さん作「きつねの夕食会」の「新しいコーヒーセットを買ったので、きつねの女の子は、お客をよんでみたくてたまりませんでした」。 こんな風に人に衝撃を走らせる一文を、自分もかきたいと思います。