ぽとり。オオカミが木をゆらすと、柿の実が落ちてきた。
「わぁ~、柿だぁ。なるほどね。探せば、あるもんだねぇ」
感心する男の子を、オオカミがつっついてうながす。
「早く食え。そして太れ。おれだって、はらぺこなんだぞ」
「そんなにすぐに太るわけないでしょ」
文句を言いながらも、男の子は、柿の実を手に取ると、
「じゃあ、むいてくれる?」
柿をオオカミに差し出した。
「はぁ? 何を言ってるんだ?」
「皮をむいてよ。皮には、汚れとかついてるでしょ。このままじゃ、食べられないよ」
「おれに言うなよ。そういうのは、人間の方が得意だろ」
「え・・・。ぼく、自分でくだものの皮なんて、むいたことないんだけど」
「おれだって、やったことないぞ。もういいから、そのままかじれよ」
「えぇ~~~~・・・」
不満タラタラだったが、なにぶん、おなかがペコペコだ。せめて、きれいにしてから食べようと、男の子は、リュックに入っていたタオルで、柿をゴシゴシこすった。
ねんいりに、こすりおわると、思い切って、皮ごと柿にかぶりつく。が、次の瞬間。
「うえぇっ!ま、ま、まずいっ!」
失敗した福笑いみたいに顔をゆがめ、口に入った実をはき出した。
それにとどまらず、ぐえぇ、ぐあぁと、汁の一滴にいたるまで、全てをはき出そうとする。
「おいおい。何するんだ。出さないで飲みこめよ。そして太れ」
「何だよ、これ・・・。全然甘くない。エグいし、苦いし・・・。お店で売ってるのと全然ちがう。こんなの、柿じゃないよぅ。いつものお店の、3こで1パックの柿、持ってきてよぉ」
「都会っ子め、ぜいたく言うな。はらがへってるんだろ」
「これはムリだって。口がひんまがりそうだよ・・・。田舎っ子でもムリ。ぜったいムリ」
涙目になって、ゲェゲェとやりつづける男の子。オオカミは、またまた、ため息をついた。
「はぁ・・・。しょうがないな。ほかのものを探してやる」