「また、パックづめかよ。何てこった。森には、こんなにたくさん、食べものがあるのに、おまえは、パックにつまってなきゃ、食べられないのか。一体どうやって、おまえを太らせりゃいいんだ」
ふいに、オオカミの目が、ぎらりと光った。その目が、ゆっくりと男の子の方を向く。
「しょうがねぇ。どうあっても、太らないんだったら、いっそ、このまま食っちまおう。少しは、はらの足しになるだろ」
「え、え。ちょ、ちょっとまって」
「安心しろ。ホネまでちゃんと、しゃぶってやる」
「ま、ちょ、まって。ガ、ガリガリにやせたぼくなんか、おいしくないよ。それよりも、そのウサギを・・・」
ハッと気づいて、男の子はウサギを見た。オオカミも、ハッとした顔で、ウサギに目をやる。
そのまましばらく、ウサギを見つめる、一人と一匹。
「・・・ねぇ。ウサギを食べるなら、ぼくのことは、食べなくてもいいんじゃない?」
「・・・それもそうだな」
「ぼくのこと、わざわざ太らせてから食べるより、このままウサギを食べちゃう方が、楽ちんじゃない?」
「・・・それもそうだな」
オオカミは、少しの間、ちらちらと、男の子とウサギを見比べて、考えていたが、
「ふむ。それもそうだ」
とつぶやくと、ガツガツとウサギを食べ始めた。