樹木と朗読と都市

舞台俳優だけに、間をとるのがとてもうまい。体が動き、表情が目まぐるしく変わる。「演技してる俳優がたまたま、本を持っているようなものですね」と声をかけると、我が意を得たりとにっと笑い、「そりゃ僕は俳優だからね」と返ってきました。

バッハさんは子供たちを物語の世界へ引き込んでいく。

◆都市の木を考えるプログラムの一環
図書館で朗読が行われるのはそれほど珍しくはないと思いますが、今回は「樹木の日」というキャンペーン・デーのプログラムの一環でした。ドイツの都市にとって樹木とは何か? それは殺風景な部屋に、わざわざ植木鉢を買ってきて、緑のある落ち着いた空間にするようなもので、都市の贅沢品という言い方がぴったりくるかもしれません。住む人にとって都市の生活の質を高めるというわけです。小さな都市でも樹木がけっこう多いのは、そういう事情が反映されているわけです。実際リスなどの動物が木々を走り回っているのを見かけることもあります。

こういう感覚は19世紀頃にはすでにあったようですが、20世紀の後半にはいると環境問題なども出てくるため、「都市の緑」がより価値のあるものとされてきました。加えて、ちょっとした開発ブームで緑地が潰されていくことも出てきていて、都市の緑は最近大きなテーマになっています。そんな背景のなかでの「樹木の日」で、植樹や都市の樹木に関する情報が提供されたりしたほか、映画上映もありました。文化プログラムとしての性格も持っているわけですね。

高松平藏 について

(たかまつ へいぞう) ドイツ在住ジャーナリスト。取材分野は文化・芸術、経済、スポーツ、環境問題など多岐にわたるが、いずれも住まいしているエアランゲン市および周辺地域で取材。日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。一時帰国の際には大学、自治体などを対象に講演活動を行っている。 著書に『エコライフ ドイツと日本どう違う』(化学同人/妻・アンドレアとの共著 2003年)、『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(学芸出版 2008年)のほかに、市内幼稚園のダンスプロジェクトを1年にわたり撮影した写真集「AUF-TAKT IM TAKT KON-TAKT」(2010年)がある。1969年、奈良県生まれ。 HP;インターローカルジャーナル