樹木と朗読と都市

朗読が行われた部屋。18世紀の歴史的建築物が「現役」。

また、朗読の場所も良いと思いました。というのも、図書館は旧市役所だった建物で、現在市営アートギャラリーも入っています。18世紀のバロック様式の建築物で市街の真ん中にあり、朗読が行われた部屋も当時の様式が残されたところです。子供たちが、こういう空間を博物館の陳列品のように見るのではなく、日常的に使われている現場に居合わせるのは、町の歴史に対する肌触りのようなものを獲得するような気がします。

◆マジックツリーシリーズは日本では難しい?
余談ながら、私も子供のころ『ハックルベリー・フィンの冒険』などを読んで、ツリーハウスを作ろうとふと思ったことがあります。しかし実家のいかにも和風の植木を見て、「何かが違う」と思って諦めました。

ところがドイツの家族向けの一戸建てなどを見ると、お父さんが頑張って作ったのでしょう、手作りのツリーハウスのある庭がときどき目につきます。ドイツとアメリカを一緒くたにするのも乱暴なんですが、そんな様子を見るにつけ、ツリーハウスをモチーフにする物語は日本では生まれにくいものなんだろうと思います。木をテーマに児童文学や童話を集めると、各国や地域の樹木観がいろいろ見えてきそうですね。(了)

撮影:高松平藏

高松平藏 について

(たかまつ へいぞう) ドイツ在住ジャーナリスト。取材分野は文化・芸術、経済、スポーツ、環境問題など多岐にわたるが、いずれも住まいしているエアランゲン市および周辺地域で取材。日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。一時帰国の際には大学、自治体などを対象に講演活動を行っている。 著書に『エコライフ ドイツと日本どう違う』(化学同人/妻・アンドレアとの共著 2003年)、『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか』(学芸出版 2008年)のほかに、市内幼稚園のダンスプロジェクトを1年にわたり撮影した写真集「AUF-TAKT IM TAKT KON-TAKT」(2010年)がある。1969年、奈良県生まれ。 HP;インターローカルジャーナル