次の日、夕食の前に、それを王妃の部屋に運びこみ、寝台の上に置いてから、その中に、水を、いっぱいに、そそぎこみました。
すると、どうでしょう! ひつぎの中に美しい花々が現れて、ゆらゆらと、あやしげに、ゆれたのです。
その夜、ディドーは、めし使いたちを、みな、下がらせて、自分の手で、王妃のグラスにワインを注いだり、お皿にごちそうを取り分けたりしました。
「愛しい妻よ、たんとおあがり」
だれも、ディドーが、そっと、なみだをふいていることに気づきませんでした。
食事が終わると、ディドーは、王妃の冷たい額に口づけして、
「先に行ってお休み」
と言いました。
王妃は、何も疑うことなく、席を立ち、自分の寝室に入りましたが、寝台の上に美しいガラスのひつぎを見つけると、矢もたてもたまらず、その中に入って、ぐっすり、眠ってしまいました。
しばらくして、やって来たディドーは、急いでひつぎのふたを閉め、カギをかけました。
そして、窓を開け、そのカギを、さんの上に置きました。
すると、どこからともなく、大ガラスがやってきて、カギをくわえて、どこかへ飛び去ってしまいました。
「ああ、もう、これで、取り返しようがない」
王はため息をついて、窓を閉めました。
それから、王妃の部屋にカギをかけ、以後、だれもその部屋には入らないよう、お城の人々に、きつく、命じたのでした。