お城へ帰り着くと、窓を開け、さっそくなわばしごを放ちました。
なわは下へはたれずに、上へ上へとのびて行き、とうとう、天守のてっぺんに届きました。
水晶玉は、すぐそこです。
リンゴ王妃はくつをぬいではだしになると、なわばしごを上っていきました。
それは目もくらむような高さでした。リンゴ王妃は、何度となくおじけづきましたが、どうしても世つぎの王子がほしくて、けんめいに、なわを上っていったのです。
とうとう、天守のてっぺんの水晶玉に手をかけた時、リンゴ王妃は、いっしゅん、その吸いこまれるような美しさに、うっとりしてしまいました。
真夜中、雲ひとつない星月夜を映して、水晶玉は、あたかも、その中に、もう一つの夜空をくるみこんでいるようでした。
でも、見とれている場合ではありませんでした。王妃に気づいたお城の人々が、大勢、下から見上げていたからです。